肖像権とは

 

変造写真は権利侵害

1.肖像権とは何か?

「肖像権」とは、自分の名前、声、写真、似顔、その他自分の特徴をコントロールする権利であり、他人がこれらを商業目的に使用することを防ぐことを含むものです。 だれでもが肖像権をもつものではなく、商業性のある人に限定されます。また、肖像権を主張できるのは、商業目的で使用された場合をいい、批評や報道など、その他の非商業目的の場合には同意をとる必要はありません。では、どういった場合肖像権の問題が起こるのでしょうか?   

2.ダスティン・ホフマン裁判

俳優のダスティン・ホフマンは、1982年公開された映画「トゥツイー」で女装しました。ロサンゼルス・マガジンという出版社は、その「トゥツイー」での女装シーンの写真を変造して、ダスティン・ホフマンにデザイナー・ブランドのシルクのガウンと靴をはかせた写真を作り、そのブランドのショッピング情報といっしょにロサンゼルス・マガジン誌97年3月号に掲載しました。 ロサンゼルス・マガジン社は、ダスティン・ホフマンの写真使用について、本人の同意を得ていませんでした。スティール写真を購入する際に、変造を禁止する契約条項を無視し、コンピューターを使用してそのイメージを変造しました。ダスティン・ホフマンは、ロサンゼルス・マガジン社とその親会社を相手に、カリフォルニア州の連邦裁判所に、肖像権と商標権侵害による損害賠償請求の訴訟を提起しました。 俳優にとって名前やイメージは重要な財産です。その名前やイメージが他人によって、勝手に使用されたり、変造されてしまっては、俳優としてのキャリアに影響を与えることになります。 裁判所は、出版社が、ダスティン・ホフマンの肖像権と商標権を侵害したことを認定し、ダスティン・ホフマンの名前とイメージの商業的な公正価格を算定して、損害額として150万ドル、懲罰的賠償額として更に150万ドル、更に弁護士費用として27万ドルを支払うよう命じました。     

3.フレッド・アステア裁判その後

故人の肖像権を商業目的で使用する場合、いつも遺族の同意が必要でしょうか?今は亡きフレッド・アステアの肖像権をめぐって、アステア未亡人がビデオ会社を相手にカリフォルニア州で訴訟を起こしていましたが、敗訴しました。その理由は、フレッド・アステアの肖像権の使用が、カリフォルニア州で例外として認められた使用に当たり、遺族からの同意をとる必要がないと判断されたからです。その例外とは、「演劇、書籍、雑誌、映画、芸術、政治的および報道価値のある内容、またはこれらの宣伝広告を目的とした使用」をいいます。 被告となったビデオ会社は、「映画」そのものの著作権、肖像権のライセンスを受け、その一部のフッティージをダンスビデオの頭出し部分に使用したものであって、その使用は「映画」に該当するので、ビデオ会社はアステア未亡人からあらたな許可を受ける必要はないと判断されました。 この判決を不服とするアステア未亡人は、敗訴後もロビー活動を続けてきました。そして、カリフォルニア州議会とグレー・デービス州知事は以下のような法案を可決しました。

4.カリフォルニア州法の改正

新しい法律となった「アステア、有名人のイメージを守る法律」は、現行のカリフォルニア州法にいくつかの変更を加えました。第一に、故人の肖像権の保護期間を現行の50年から70年に延長しました。第二に、肖像権の例外規定の内容を変更しました。第三に、故人がカリフォルニア州の在住者でなくても肖像権が保護されるよう変更しました。第四に、州政府に対して、故人の肖像権を保有している人の情報をウエッブ・ページ上に登録するよう義務付けました。   (1)保護期間の延長:50年から70年への延長は、昨年の著作権の保護期間が20年間延長されたのと足並みをそろえたものと言われています。エルビス・プレスリー、マリリン・モンロー、ジェームス・ディーンらの肖像権は、保護期間が20年間延長され、ライセンス料を生み続けます。   (2)例外規定の変更:現行の例外とされる「演劇、書籍、雑誌、映画、芸術、政治的および報道価値のある内容、またはこれらの宣伝広告を目的とした使用」から、「演劇、書籍、雑誌、映画などは、フィクションもしくはノン・フィクションの娯楽、演劇、文芸または音楽作品である」場合に限定して、肖像権の同意を受ける必要がないと変更しました。アステア未亡人は、現行の例外規定をアメリカ憲法修正第一条の防御に限定しようと働きかけていましたが、州議会は折衷案を採択しました。    例外規定の変更はアステア裁判に影響を与えるでしょうか?ビデオ会社が製作したダンスビデオの頭出しに使用されたフレッド・アステアのフッティージは、ビデオそのものの宣伝広告とはいえませんし、法改正によって影響はないものと解釈されます。   (3)保護対象の拡張:現行法では、故人が死亡の時、カリフォルニア州在住者でなければ保護されませんでした。ダイアナ妃が死亡した時、カリフォルニア州で、ダイアナ妃の写真や名前を使ったお菓子が売られて、王室の頭を悩ませたことがあります。現行法では、ダイアナ妃は死亡時、カリフォルニア州の在住者ではないので、ダイアナ妃の肖像権が侵害されても、カリフォルニア州法で肖像権保護を受けることはできません。ダイアナ妃はイギリスの在住者であり、イギリスの肖像権に関する法律が適用されます。イギリスでは肖像権を保護する規定がありませんので、ダイアナ妃の肖像権はカリフォルニア州では保護されません。しかしながら、アメリカ商標法と不正競争防止法での不公正な広告に該当しますので、ダイアナ妃の写真や名前を使った商品を、王室の許可なく、アメリカで製造・販売することはできません。 法改正により、ダイアナ妃の肖像権はカリフォルニア州でも保護されることになりました。日本の著名人についても同様のことがいえます。たとえば、日本の有名な故人の肖像権がカリフォルニア州で同意なく商業目的で使用された場合、保護されることになります。

5.技術が生み出すあらたな問題点

肖像権は目に見えない財産。権利者の同意を得ずに、商業的な目的で使用すると侵害となります。コンピューターを駆使して有名人のイメージを変造したり、有名人のそっくりさんロボットを作って、商業目的で使用すると肖像権侵害となります。では、コンピューターを使用して、サイバー人間を生み出した場合、サイバー人間に肖像権は発生するでしょうか?有名になったロボットに肖像権が認められるでしょうか? ジェームス・キャメロン監督は「タイタニック」(97年公開)でサイバー人間を作りました。日本のタレント・エージェンシーもまた、サイバー・アイドル・タレントをデビューさせました。技術の発展とサイバー人間の出現で、「肖像権とは何か」が変わっていくことでしょう。


映像新聞1999年12月27日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
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