ネット配信と法律

 

 

音楽ネット配信により発生する法律問題

1.ネット配信

インディー系から始まった音楽のネット配信ビジネス。毎日、300万にわたるCDと同質の音楽が無料でダウンロードされています。2005年には、460億ドルと言われる音楽ビジネスの10%を占めるであろうと予想されるネット・ビジネス。コンピューターの普及で更にその成長が見込まれます。2005年には、アメリカはネット利用の主要国であり続け、ネット配信マーケット全体の57%を占めます。次にヨーロッパで21%。その他が残りを占めると言われています。

2.メジャー・レーベルの対応

著作権を保護することが第一。しかし、ディジタル化の波に乗り遅れても困ります。ネット配信ビジネスをコントロールすることにより、海賊版の防止を図ろうと、BMI, EMI, SONY, UNIVERSAL, WEAといった5大メジャー・レーベルが音楽のネット配信ビジネスを真剣に取り組み始めました。タイムワーナーの音楽部門と合併するEMIは、マドンナやローリング・ストーンズなどの大物アーティストの音楽をネット上でダウンロードできるようサイトを準備しています。これに対抗して、A&M、インタースコープ、ゲッフィン、モータウン、ポリドールなどのレーベルをかかえるユニバーサル・ミュージック・グループは、BMIとアライアンスを組んで、音楽のネット配信ビジネスに力を入れています。

3.レコード契約はどう変わるか?

音楽がネット上で配信され、ダウンロードすることが可能になりました。レコード店にいかないで、ネット上で音楽CDやDVDを注文することができます。卸し業者、小売り店といった伝統的な経路を通じて販売されていたレコード。ディジタル化によって、アーティストや音楽会社はどういった影響を受けるのでしょうか?今までのレコード契約は適切に、ネット配信をカバーしているでしょうか?音楽使用料ロイヤルティ計算はどう影響を受けるのでしょうか?   
レコード契約:  アーティストが音楽を録音して、CD、DVD、カセットテープなどで販売する場合、通常、音楽会社とレコード契約を締結します。音楽会社は、レコーディングに必要な経費を支払う代わりに、レコード原盤に関する著作権を保有します。これに対して、楽曲に関する著作権は作曲や作詞をした人もしくは出版会社が保有します。いままで音楽会社は、アーティストの育ての親のような役割を負ってきました。資金力のない新人アーティストは、音楽会社の資金でレコーディングを行い、コンサート・ツアーの費用を出資してもらってきました。ディジタル技術の発達で、レコーディングが簡略になりました。もし、アーティストが自分でレコードを完成させ、その完成品をネット上で販売したり、配信することが可能になりました。インディのアーティストは従来のレコード契約なしに音楽を売ることができるようになります。   

レコードとは:  アーティストが音楽会社との間で結ぶレコード契約では、通常「レコード」とは、「原盤から複製した、7インチ・シングル・ディスク、12インチ・シングル・ディスク、アナログ・カセット・アルバム、ディジタル・オーディオ・アルバム、ディジタル・コンパクト・カセット・アルバム、ディスク・アルバム、CDアルバム、その他現在実用化されており、もしくは将来開発され実用化される一切の方式による媒体」をいいます。音楽をネット上で配信し、ダウンロードする場合、いままでの「レコード」の規定でカバーされるでしょうか?   

実演権:  楽曲の著作権者は、ラジオやテレビ、レストラン、コンサート・ホールなどでその楽曲が流れるごとに使用料として、ロイヤルティが支払われます。アメリカでは、BMI, ASCAP, SESACといった音楽使用料徴収団体がロイヤルティを徴収して、楽曲の著作権者もしくはその出版会社に支払います。この権利は実演権と呼ばれます。ネット上での音楽配信は公に実演することになるでしょうか?アメリカ著作権法は、The Digital Performing Rights and Sound Recording Act of 1995を制定し、「ディジタルによる送信方法」もまた、公に実演する権利に含まれることを明記しました。   

パッケージ料:  レコードは通常、カセット、CD、DVDといった有形の媒体に録音されてきました。ですので、音楽会社は、レコード契約で、パッケージを作る料金として、通常の小売り価格の25%にわたる金額を控除してきました。また、返品があった場合のリザーブを要求してきました。ネット配信の場合、パッケージやリザーブを控除することはできなくなるでしょう。   カップリング制約:  アーティストによっては、他のアーティストと抱き合わせCDを作ることを好まない人がいます。しかし、ネット配信でダウンロードできるようになると、消費者が好きなように、いろいろなアーティストの楽曲を独自に編成することが可能になります。   
外国の出版社との間の契約:  アメリカ国外でのレコード販売については、レコード契約でロイヤルティ料金が減額されます。たとえば、カナダでは、アメリカでの85%、ドイツや日本では、アメリカの75%、ヨーロッパでは66%、その他では50%に減額されています。ネット配信の場合にも、ロイヤルティの減額をすることができるでしょうか?   

ロイヤルティは誰が徴収するのか?:  ある音楽を、アメリカでアップロードし、日本でダウンロードした場合、アメリカの音楽使用料徴収団体がロイヤルティを徴収するのか?日本のジャスラックが行うのか?それとも両者が徴収するのか? 新しいメディアの登場で、従来のレコード契約では解決できない法律問題が発生してきています。

4.最後に

インターネットはワールドワイドでコンテンツを配信します。新しいメディアがあらたな市場を開拓します。消費者は便利で、価格やサービスの良いビジネスに流れます。伝統的な流通経路でCDやレコード盤を購入する消費者。ネット上で音楽配信をダウンロードしたり、電子取引を利用する消費者。独自のパッケージをつくる消費者。消費者の嗜好の多様化がマーケットを動かしていくのでしょう。


映像新聞
2000年3月27日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
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