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1.1999年法改正
1999年11月にDBS法規制が改正されました(Satellite Home Viewers Improvements Act)。今までローカル局の番組を流すことが法律で禁じられていたDBS事業者が、今年からローカル番組を同一市場で流すことができるようになります。DBSに加入している一般世帯は、地上波用アンテナを設置することなく、ローカル番組を見ることができるようになります。今までケーブルに市場を押されていたDBSに、今回の規制緩和により巻き返しをするチャンスが与えられたわけです。
2.DBS市場
1999年度におけるアメリカのDBS市場は約1,100万世帯と言われています。その約70%がディレクTVに加入し、約29%がエコスターに加入しています。これに対して、テレビ世帯の3分の2である6,600万世帯がケーブルに加入していると言われています。ケーブル加入世帯の数とは比べものにならないかも知れませんが、昨年1年間に231万世帯が新たに加入しているDBSは着実にアメリカの家庭に浸透しつつあるといえます。
DBSの歴史そのものはあたらしいものです。1990年代になって大きく発達したDBS。サテライト技術により、多チャンネル、ディジタル送信といった特性をもっています。DBSの普及はケーブル・テレビにとって脅威となりつつあります。
3.DBS対ケーブル
もともと難視解消という目的で始まったケーブル・テレビ・ビジネス。1940年代後半にさかのぼります。当時のケーブル・テレビは、テレビ局の信号を難視地域に再送信するだけの零細経営でした。しかし、視聴者は、地上波の番組をケーブルでも見ることができるため、ローカルテレビ局の視聴者を奪うことになり、ケーブルと地上波の関係が悪くなります。ネットワークの圧力でFCCは、ケーブル事業を規制します。1970年代になると、政府の規制緩和と衛星を利用した番組配給により、ケーブルは急速に加入世帯を増やします。1972年に始まったHBOは、はじめて通信衛星を利用し、ケーブル向けの映画とスポーツ番組を配給し、成功をおさめます。70年代後半には、有料ケーブル・サービスが50局増え、80年代にはケーブルの基本サービス料金の自由化、マスト・キャリーの排除といった規制緩和により、ケーブル・システムは大きく発展します。
マスト・キャリーという足かせのなくなったケーブル事業者は、人気の高いローカル番組のみをキープし、視聴率のとれない番組をケーブルから外しました。これに反発したローカル局は、FCCに対し、再びケーブルの規制を求めロビー活動を始めます。ローカル局のロビーが功を奏し、1992年法では、マスト・キャリーが復活します。これにより、ローカル局は、ケーブル事業者に対し、すべてのローカル番組をマスト・キャリーさせるか、もしくは再送信のライセンス交渉をするかを選択することができるようになります。再送信の対価として金銭の支払いを求める交渉が難航したネットワークは、代わりに、ケーブル・チャンネルの枠を要求しました。ABCはESPN2を、NBCはMSNBCを、フォックスはfXといった新しいケーブル・ネットワークを開設し、ケーブルでの枠を確保することができました。
90年代には、ケーブルを脅かすライバルが現れます。1990年にはプライムスター(1999年にディレクTVに吸収合併されます)が、1994年にはディレクTVがDBSサービスを開始します。DBSはケーブルでカバーされない地域にケーブル番組を供給する目的で始められました。しかし、ケーブル同様多チャンネルの特性をもち、ケーブルにないディジタル送信が可能なDBSはケーブルの脅威となります。
4.ABC, NBC, CBS, フォックス対プライムタイム24訴訟
プライムタイム24は、ディレクTVなどのDBS事業者にテレビ番組を提供するサテライトテレビ会社です。プライムタイムが供給する番組の画質は、地上波やケーブルよりも鮮明なこと、プライムタイムが再送信するローカル番組は、東海岸と西海岸の両方の番組を見ることができるので、好きな番組を選ぶことができ、非常に魅力的なプログラムでした。ネットワークにとっては、ローカル局の視聴者がプライムタイムに流れてしまうと、スポンサーの広告や自社番組の宣伝を見なくなり、広告収入を失いかねません。ネットワークはプライムタイムに対して、ローカル番組の再送信を差し止める訴訟を提起しました。1988年法によると、原則としてDBSはローカル番組を同一市場で再送信することができません。地上波アンテナを使用しても地上波を受信することのできないテレビ世帯のみが、DBSでローカル番組を受信することが認められています。連邦地方裁判所は、プライムタイムが再送信していたテレビ世帯は、地上波受信難視世帯に該当しないので、著作権侵害になると判定し、プライムタイムのサービスを差し止めました。
5.1999年法の意義
地上波アンテナを別に設置するか、またはケーブルに加入しなければローカル番組を見ることができないとすると、視聴者はDBSに加入することをためらいます。ローカル番組を同一市場で再送信できないDBS事業者にとっては不利でした。DBS事業者は、ローカル番組を再送信できるよう法改正を求め、ロビー活動を続けてきました。その成果が1999年法改正です。アメリカ著作権法にあらたに122条が加えられました。DBSは、今年5月末までにネットワークとの間でローカル番組の再送信のライセンス交渉を締結しなければなりません。ディレクTVは、NBC,
ABC, フォックスとの間で、エコスターはフォックスとの間でライセンス契約を締結しました。これにより、DBSはケーブルと対等の立場にたったということになります。
6.ネットワークとケーブル事業者
ネットワークにとっては、ローカル番組をケーブルに流すか、DBSを使うか選択肢が増えたことになります。ABCは、タームワーナー・ケーブルに対し、ニューヨークといくつかの市場において、ソープ・ネットとテゥーン・ディズニーをタイムワーナーのケーブルで流すこと、そしてディズニーチャンネルをペイからベーシックに変更することに同意しなければ、ABCの番組を引き上げると圧力をかけています。ディズニーは、もしABCの番組を引き続き見たければ、DBSに切り替えるよう198ドルのリベートを視聴者に提供しています。フォックスもまた、コックス・ケーブル・システムに対し、ローカル番組の再送信をストップし、DBSとの間でライセンス交渉を行っています。
7.最後に 1999年法改正は、ネットワーク、ローカル局、ケーブル、DBSそしてFCCの間の複雑な力関係を反映した結果といえましょう。アンテナか、ケーブルか、ディッシュか。視聴者にとっても複雑な選択肢となってきました。
映像新聞2000年4月24日掲載 (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved
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