製作・配給会社特集:ギャガ・コミュニケーションズ

 

 

 

 

ギャガ・コミュニケーションズ

1986年に生まれたギャガは、洋画ビデオを配給する会社としてスタートした。創業当時は、ホラー映画やB級映画ばかりのマイナーな配給会社だった。現在ではトム・ハンクス主演の「グリーンマイル」やアンソニー・ホプキンス主演の「ハンニバル」といった、ハリウッドのメジャー・スタジオがアメリカで配給する大作を日本で配給し、ヒットさせた。2001年にはナスダック・ジャパン市場への上場も果たした。ギャガは、洋画を配給するだけでなく、日本のコンテンツを海外に発信するための共同製作事業を始め、今後は、今まで蓄積したライブラリーを利用し、ブロードバンド時代のコンテンツ配信にも積極的に取り組んでいく。

アイデアと情熱が起業のきっかけ

ギャガの創始者である藤村哲哉氏は、サラリーマン出身だった。1976年に慶応大学を卒業し、海外へのあこがれや音楽ビジネスへの興味から、音響家電メーカーに就職した。海外に家電製品を販売する営業畑だった。海外出張も多かった。80年代にビデオ・デッキが登場し、これが爆発的に売れた。海外からの注文が殺到し、生産が間に合わなかった。それでも注文は止まらなかった。その波は日本にも訪れた。ビデオ・デッキが売れ始めると、方々にレンタル・ビデオ店ができて、音楽CD、音楽ビデオ、映画ビデオをレンタルし始めた。ギャガ設立の一年前の85年にはTSUTAYAができた。
ギャガを立ち上げたばかりの藤村氏は、ビデオ用ソフトは売れると確信した。ビデオ・デッキが普及し、レンタル店が増えた。音楽でも映画でもソフトなら何でも売れた。映画のソフトが主流となってくると、レコード会社やビデオ会社だけでなく、ビデオ・デッキを製造している家電会社までもが映画ビデオを配給し始めた。洋画ソフトは欲しいが、どうやって配給権を買い付けるのか、映画の権利関係はどうなっているのかといった知識や、ソフト・ビジネスのノウハウをもった人がいなかった。そこでギャガは、ビデオ販売会社のために、洋画日本国内におけるビデオ化権を買い付けるエージェントを始めた。藤村氏がマーケット(映画祭)に行き、洋画ビデオ化権を買い付けた。ビデオ市場が急成長した80年代、ギャガの登場は絶妙のタイミングだった。
30代前半という若くて無名の経営者に対して、「ハリウッドでは、自分のように若くて、実績がなくても、それが決して不利にはならなかった。なぜならマーケットでは、買い付けを即決即断できたので、自分への信用ができていった」と当時を語る。

 藤村哲哉社長

 
映画配給会社へ

ギャガは、ビデオ化権だけでなく、劇場用の洋画の配給権も買い付けた。初めて劇場用に買い付けた作品は、「彼と彼―とても大きな水しぶき」というイギリス映画だった。当時の値段で5,000ドルだった。大手の配給会社と比べると資金力が弱かったので、マイナーなミニシアター用の作品ばかりを買い付けて、劇場配給していた。
ギャガに大きなチャンスが現れる。それが「マスク」(1995年)という作品であった。「マスク」はニューライン・シネマというアメリカの独立系映画会社が製作・配給した映画で、当時は無名のコメディアン俳優ジム・キャリーが主演していた。無名の製作会社に無名の俳優という組み合わせ。ヒットするとは期待していなかった。いざ公開してみると、日本での配給収入は18億円を記録する大ヒットとなった。翌年には、ブラッド・ピット主演のスリラー映画「セブン」の大ヒットと続いた。これもニューラインの作品であった。ニッチな作品を売りとしていたニューラインとギャガは、これらのヒットで大ブレイクし、一目置かれるようになる。

ギャガは、他の配給会社同様、マーケットで完成した映画を試写して、配給権を買い付ける。また、製作会社から完成前の映画の配給権を青田買いすることも多い。制作費が巨額な作品は、製作段階で売りにだされる場合が多く、リスクも大きい。昨年ギャガが買い付けた洋画の本数は、350本にも及ぶ。劇場用公開の映画はそのうち約50本。残りはビデオ用やテレビ放映用だ。7割から8割の作品をマーケットで買い付けるという。特定の製作会社とのアウトプット(一定期間、完成していない一定本数の映画の配給権を引き取ること)はおこなわない。作品は一本ごとに買い付けていく。

日本のコンテンツを海外発信

ギャガでは、日本のコンテンツを海外に発信するために、海外の製作会社と共同製作を始める。第一弾は「鉄拳」の実写化だ。「鉄拳」は世界中でヒットしたビデオ・ゲームのタイトルで、ギャガの株主のひとりであるナムコが原作権を保有している。映画化権を預かったギャガは、アメリカの製作会社クリスタルスカイと共同で、製作資金を調達し、これを映画化する予定だ。ビデオ・ソフトが実写化されヒットした映画に「モータル・コンバット」(1995年)や「トゥームレイダー」(2001年)がある。
藤村氏は、「今までは、洋画配給を通して海外の文化を日本に紹介してきた。これからは日本の文化を海外に紹介していきたい。日本には独自の文化がある。アニメやビデオ・ソフトなどがそれだ。日本のコンテンツがハリウッドで受け入れられつつある。日本発のコンテンツを、海外の会社といっしょに共同製作し、完成した作品から発生するすべての権利を長い期間利用し、世界中でビジネス展開する時代になった。ギャガのゴールは、映像ビジネスを通じて国際間の相互理解を助けること。日本発のコンテンツを国際化し、産業として育成していくビジネス・モデルを構築していくことが必須だと感じる。その第一歩として、「鉄拳」の実写化がある。これを成功させて他の作品も手がけていきたい。会社の信用と実績、資金力がついた今がチャンスだ」と語る。

チャレンジ精神が原動力

社名である「gaga」とは、「ミーハーな映画のファン」という意味。藤村氏が偶然英語辞書でみつけたという。新しい会社に新しい感覚のことば。日本では「ギャガ」と呼び、アメリカ人は「ガガ」と発音する。ギャガは、常に時代の一歩先を読み、新しいビジネス・チャンスを開拓していく。そのチャレンジ精神がギャガの原動力だ。
 

映像新聞平成14年4月29日号掲載
 

 
For More Information
Internet: mahlesq@aol.com