製作・配給会社特集:東宝東和株式会社

 

 

 


東宝東和株式会社は、ハリウッドのメジャー・スタジオが北米で配給する大作映画を中心に日本で配給する独立系配給会社だ。今年は、アカデミー賞受賞女優のジュリア・ロバーツが出演するラブ・コメディー「アメリカン・スウィートハート」を皮切りに、ソマリア戦争を扱ったリドリー・スコット監督作品「ブラックホーク・ダウン」、そしてベン・アフレックを新ジャック・ライアンに迎えた「ザ・サム・オブ・オール・フィアーズ」(原題)といった超大作を含む18本のハリウッド映画と韓国映画1本を公開する。

東宝東和の前身

東宝東和の前身は、故川喜多長政氏が外国映画輸入配給業のさきがけとして1928年に設立した東和商事合資会社だ。1903年東京で生まれた川喜多氏は、父親の仕事の都合で、少年期を中国本土ですごし、日本、ヨーロッパで学んだ。異文化に接する機会が多かったという。帰国後、24才の時ひとりで、ヨーロッパの映画を輸入するための会社を起こした。その年は、ドイツ映画を1本輸入しただけだった。ドイツの映画会社と提携してからは、配給本数も16本と増えた。中でも、買い付けたドイツ映画「アスファルト」(1929年)は日本でヒットし、当時のキネマ旬報のベスト・ワンに選ばれた。その後、ヨーロッパ映画を日本に輸入するのみならず、日本映画を海外へ紹介し、外国との合作映画なども手がけるようになった。東和映画株式会社と改称すると、輸入先もヨーロッパからアメリカへと徐々に移行した。現在では、東宝東和株式会社となり、グループ会社である東宝の指導のもと、話題性の高い、ハリウッドの超大作映画を中心に配給している。
昨年は、9本の洋画を配給したが、今年のラインアップは19本と増えた。東宝東和で、海外との取引を担当する外国部長小松豪次氏は、「特にハリウッド映画に限定していない。上質の映画であれば国籍は問わない」と語る。

 小松外国部長  

 
海外の提携会社

東宝東和には、営業本部制という各部を統括する責任体制がしかれている。営業本部の下に、営業部、外国部、宣伝部、マルチメディア部が置かれている。各部は営業本部に対して報告責任を負うことにより、各部の責任を強化する。外国部の責任者である小松氏は、洋画の買い付け、配給契約の締結、海外製作会社との共同製作を交渉し、海外ビジネスの窓口となるだけでなく、日本で洋画を配給する際、どういった国内の提携会社と組むかなどのスキームを立てるのが主な仕事だ。個々の映画に関しては、どういった宣伝や営業展開を行なっていくのか、どういったビデオ会社やテレビ局と組むのか、など各部が責任を持って対応していくが、配給会社としての責任を一連の流れの中で全うすべく管理し、海外の製作会社への報告等もきちんと一枚岩で行なうために営業本部制がある、と小松氏は営業本部制の重要性を説明する。
洋画の買い付けといっても、映画祭で試写して配給権を買い付けることはほとんどしない。セールス・エージェントから買うことも少ない。むしろ、海外の有力製作会社と提携し、一定の期間、一定本数の映画の提供を受けるシステムを確立した。海外の提携会社の中では、元ディズニーの幹部から独立したベテラン・プロデューサーであるジョー・ロス率いる製作会社、リボルューション・スタジオが一つの柱だ。今年は、リボルューション作品9本を配給する。リボルューションの作品は、北米ではソニー・ピクチャーズが配給する。他に、「スパイ・ゲーム」を製作したビーコン・ピクチャーズが、もう1本新作を提供する。ビーコンの映画は北米では、ユニバーサル・ピクチャーズから劇場公開される。「シックス・センス」を大ヒットさせたスパイグラスも4本提供する。スパイグラスの映画は北米では、主にディズニーから劇場公開される。東宝東和が配給するハリウッド映画は、北米でメジャー・スタジオで配給されるものばかりなのが特徴だ。

共同製作スキーム

通常の配給権は、劇場配給権、ホーム・ビデオ権、そしてテレビ放映権を意味する。ライセンス期間が終了したら、権利は著作権者にもどる。その後更新するかどうかは別交渉となる。日本での配給権を得るためのMGは製作費の10%から15%の値段が相場とされているが、製作費が高騰し、配給会社の負担も高額になる一方だ。もし、日本での著作権を保有することができれば、半永久独占的に、サウンド・トラック、出版、グッズなど配給権以外の権利も利用することが可能だ。

東宝東和は、海外提携会社との間で、著作権を共有する共同製作を行なっている。その仕組みの一例はこうだ。東宝東和は、メジャー・スタジオや、主に欧州の製作・配給会社らと組む。全員で製作費を負担し、著作権を共有し、利益も共有し合う。たとえば、アメリカ側が40%〜60%の製作費を負担することにより、北米での著作権をとる。残りを各社が負担する。負担額に応じて収益を配分する。日本は日本での著作権を、欧州の会社は自国での著作権を独占的に保有し、残りの地域については、出資比率に応じて共有することとなる。特定の地域の配給権を希望する場合、優先的に交渉できる。配給権を個別に売ることもあれば、メジャースタジオ系の配給会社に配給権を纏めて委託する場合もある。映画によってケース・バイ・ケースだ。たとえば、東宝東和は、ミューチュアル・フィルムが製作したアクション映画「トゥームレイダー」の共同製作に参加した。ミューチュアルと配給会社であるパラマウントが製作費の約半分を負担し、北米での著作権を得た。残りの製作費を負担したのは、東宝東和、ドイツはテレミュンヘン、イギリスはBBCの三者であった。この三者が北米以外の地域での著作権を共有し、利益も共有した。この仕組みの利点は、製作費を共同負担することによって、海外の提携会社と共同で著作権そのものを取得すること。ヒットした映画は長い間収益をもたらす。二次使用からの収益も巨大だ。ヒット作の続編やリメイク権にも参加が可能だ。負担額が大きくなるので、リスクも大きい。とはいえ、東宝東和は単なる配給業務から、より広範な権利ビジネスへと着実に移行している。


映像新聞平成14年3月25日号掲載 

 
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