製作・配給会社特集:シネカノン

 

 

 

話題の新作「KT」を日韓共同製作・配給する。  

日本での韓国映画ヒットの火付け役  

シネカノンは、韓国で600万人もの観客を動員したヒット映画「シュリ」の日本での配給権を買い付け、大ヒットさせたことで一躍有名になった。翌年の2001年には、「シュリ」を上回るヒットとなった韓国映画「JSA」を日本でも立て続けにヒットさせた。韓国映画ブームの火付け役と言えよう。そして、今年5月には、話題の新作「KT」(日韓共同製作)が、日本と韓国で公開される。1973年8月8日、来日滞在中に拉致された金大中・元韓国大統領候補のストーリーの映画化だ。「拉致―知られざる金大中事件」という原作に基づいている。暗殺目的で拉致された金大中氏が、ソウル市内で目隠しされ傷だらけで発見された。「KT」とは彼のイニシャルで拉致事件の際には暗号として使われ、暗殺計画(Kill the Target)を意味する。この映画は、彼が拉致され開放されるまでの空白の5日間と、事件の背後に迫ったポリティカル・サスペンス映画だ。シネカノンが、この映画を企画し、日韓企業数社と共同製作し、配給する。

映画好きが昂じて、映画配給会社を起業

シネカノンを始めたのは、李鳳宇氏。李氏は、1960年京都で在日コリアン(二世)として生まれた。朝鮮高校を卒業後、大学はパリを選んだ。ソルボンヌ大学ではジャーナリズムを学んだ。当時から映画を見るのが好きだったという。帰国してから、大好きな映画の仕事がしたくて、一時シナリオ・ライターを目指したが、断念し、徳間書店に就職し映画の製作をかじった。そして1989年に、シネカノンをひとりで起業した。いくばくかの貯金が資金だった。

シネカノンで初めて買い付けた映画は、パリにいた時見たことのあるポーランド映画だった。ポーランドまで出向いて、「アマチュア」という映画の日本での配給権を手に入れた。配給も宣伝も全く経験のない李氏が、劇場探しから、チラシ配り、宣伝広告までひとりでこなした。結果だけいうと、映画は公開されたが、コスト割れとなった。「第一作は失敗でした。良い映画だから売れるとは限らない。」と、映画配給の難しさを語る。シネカノンにとってブレイクとなったのは、1991年に配給したフランス映画だった。3本まとめて配給権を買い付け、日本で公開した。その中で「穴」という映画は、李氏が好きな監督ジャック・ベッケルの作品。劇場公開だけで4,000万円の興行収入をあげ、ビデオ販売とテレビ放映からの収入をあわせると、1,000万円ぐらいの黒字となったという。「映画配給は利益を生むと確信した。どういった映画を買い付けるかは、俳優や監督の名前では選ばない。自分のイマジネーションを刺激する映画かどうかで決める。シネカノンでは、年間7〜8本の映画を配給している。」と、配給ビジネスは軌道に乗り、資金的にも余裕が出てきた。「映画をつくりたい」と思いつづけてきた李氏にそのチャンスがやってきた。  

 李鳳宇社長

初めて製作した映画

「映画をつくるなら、自分にとって分かりやすい話を映画にしたかった。」彼が選んだのは、在日コリアンのタクシー運転手が主人公で、「タクシー狂躁曲」という原作の映画化だった。映画タイトルは「月はどっちに出ている」(1993年)。自分自身の育った背景に近いものを選んで、映画化を決めたという。脚本、監督も在日コリアンにお願いした。当時はビデオ会社からミニマム・ギャランティがでたので、それを担保に銀行から借り入れ、いくらかを前払いしてもらい製作資金に充てた。劇場公開したら、評判がよくて、口コミが観客をよび、50くらいの賞を受賞し、70館での興行で、4億円を超える興行収入を出した。1億円の製作費だったので、興行だけで黒字になる計算だ。といっても、興行収入がそのまま製作会社のポケットに入るわけではない。興行主が約半分の取り分を引いた後の金額が配給会社に支払われる。李氏はその時、「これからも映画ビジネスを続けていくのであれば、製作した映画を上映することができる映画館が必要だ」と強く感じた。

映画を売るために映画館は不可欠

シネカノンは、まず地の利の良い渋谷に映画館をつくった。それがシネ・アミューズだ。95年当時の値段で3億円かかったという。それでも無理して建てた。スクリーンはふたつ、130席ある。ヨーロッパ映画、アメリカ映画そしてアジア映画を上映している。96年には、銀座にもシネ・ラ・セットという映画館をつくった。そこで上映するヨーロッパ映画の半分くらいは、自社が製作もしくは配給する映画をかける。残りは他社の配給作品だ。

シネカノンでは、映画を製作し、配給し、そして興行するという一連のメカニズムを確立している。したがって、製作・配給する映画がどのくらいの収益を生むのか予測しやすく、採算のとれる映画かどうかの基準にもなる。日本はアメリカと異なり、映画製作・配給・興行の分離がもとめられない。したがって、日本の映画ビジネスで、収益を最大限確保し、リスクを分散できる理想的なビジネス・モデルと言えそうだ。

本格的に映画製作へ

KT」は、シネカノンと数社の企業が製作委員として資金提供している。韓国からの出資が20%を占めるので、“韓国映画”として配給することができる。外国映画の配給本数を制限している韓国では、“韓国映画”だと、ワイドリリースができるので、“韓国”ラベルは重要だ。その上、映画産業を支援している政府からの補助金を受けることができる。日本では、シネカノン系の映画館はもちろん、シネマスクエアとうきゅうなどで全国ロードショーされる。韓国と日本の制度のうまい部分を抽出して作られた映画と言えよう。国境を越えたテーマの映画が、国境を越えた資金でつくられ、国境を越えて上映される。

 

映像新聞平成14年2月25日号掲載

 

 
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