インディ(独立)系映画制作

 

映画制作と資金調達について

1. はじめに

アメリカで映画をつくる場合、どうやって制作費を調達しているのか?スタジオからの資金的援助のないインディ(独立)系映画の場合、まず、考えられるのは、自己資金で制作する方法。自己資金なので、映画の制作過程、権利関係すべてにコントロールをもつことができる。もうひとつは、他人の資金で制作する方法である。資金源としては、銀行などの金融機関からの融資を受ける方法と、投資家を募って資金集めする方法がある。本稿では、他人の資金で映画を制作する場合の留意点について解説する。


2. 金融機関の役割

ハリウッドでは、銀行、保険会社その他の金融機関がスタジオや制作会社に映画制作費を融資しており、映画資金調達に大きな役割を担ってきている。金融機関は原則として映画に投資はしない。融資である。したがって、融資額に利息をつけ、完成品に担保権を設定し、優先的に返済を受ける。映画が完成しないと融資を回収できなくなる危険があるので、常に完成保証ボンドを要求する。その他に、金融機関はどういった条件で映画に資金提供をするのであろうか。

3. ネガティブ・ピックアップ

70年代から80年代にかけて、ホーム・ビデオという新しいメディアがインディ系映画に市場をつくり、あらたな収益源となった。これを受けて、従来インディ系映画に融資を躊躇してきた金融機関が、ネガティブ・ピックアップという形態で資金を融資し始めた。ネガティブ・ピックアップとは、制作会社がアメリカ国内の配給会社との間の配給契約書を担保に差し入れて、金融機関から制作資金の一部の融資を受けることをいう。金融機関は、制作会社との間で融資の担保権設定契約を結ぶ際、制作会社に関する法律書類、プロデューサー、脚本家、監督、主演その他のキャスティング、脚本の最終版、制作費、制作日程、キャッシュ・フロー、ポスト・プロなどの詳細、著作権関連書類、完成保証ボンド、過誤保険、撮影許可、ギルド関連書類等、プロジェクトに関する一切の書類を吟味する。金融機関は配給会社から返済を直接受けるので、配給会社の支払い能力もチェックする。融資期間は、18ヶ月から2年間の場合が標準的。融資額に対する利息率は、銀行によって異なる。制作会社は、利息の他、ローン手数料、法定留保金などを支払わなければならない。

4.ギャップ・ファイナンス

制作会社にとっての大きな制作資金源は、「プリセール」とよばれる海外の配給会社への映画配給権の前売りである。映画の海外市場は着実に拡大しており、特に、大きなマーケットであるドイツ、フランス、スペイン、日本など配給会社は、完成前の映画の買付けに積極的だ。プリセールにより、制作会社は、ネガティブ・ピックアップと同様、海外の配給会社との間の配給契約を担保に制作費の融資を受ける。プリセールで制作費を100%調達できない場合、制作予算と制作資金にギャップが発生する。このギャップをうめるのが「ギャップ・ファイナンス」とよばれる融資形態だ。前売りできなかったテリトリーへの配給契約を期待しての融資である。担保のない融資なので、金融機関はギャップ・ファイナンスを最小限に抑える。例えばインペリアル銀行から融資を受けるとすると、制作費220万ドルの予定で、108万5,000ドルの海外プリセールがなされている場合、インペリアルはギャップ・ファイナンスを含む182万5、000ドルの融資をしてくれる。インペリアルに対しては、212万5,000ドルを返済することになる。この中には、銀行の手数料、利息や法定留保金、遅延金、ペナルティ、その他のファイナンス関連費など、そしてギャップに対する10%から12.5%のギャップ費が含まれる(インペリアル銀行社内弁護士)。その他、保険、弁護士費用などの見えない費用がかかり、銀行からの融資だけでは制作費100%をカバーできない計算になる。最近では制作費の20%までがギャップの限界と言われており、金融機関も担保のない融資には消極的になってきている。

5.映画投資

投資家を募って制作費を調達する場合、単独もしくは複数の投資家のいる場合が考えられる。制作会社が投資家との間で映画投資契約を結ぶ場合、単なる投資なのか、投資家が映画制作のプロセスに積極的に関与するものなのかなど、役割分担と収益配分について決める必要がある。複数の投資家の場合、この契約はさらに複雑になる。また、投資家が制作会社との間で、映画制作を目的としたパートナーシップ、株式会社もしくは有限会社(LLC)を設立することがあるが、その投資はアメリカでは連邦および州の証券法上、「証券」とみなされる可能性があり、証券法の規制を受ける。第三者から資金を公募する場合、証券法の規定は厳しく、手数料も高い。また、投資家に対する情報開示義務、詐欺防止規定も適用される。制作費の金額によって、証券法の適用例外になる場合があるので、専門家のアドバイスが必要だ。 映画の利益還元の順序は、通常以下の通りで、投資家への還元はかなり優先度が低い。劇場、そしてホーム・ビデオ、テレビ、海外配給その他の二次使用によるすべての収益は、配給会社が配給手数料とプリント代、宣伝広告費(P&A費)を差し引いた後、制作会社に支払われる。これはネット収益とよばれる。ネット収益から最初に支払いを受けるのは、常に銀行。そして、制作費の超過分、制作会社の運営費、費用の留保金などを支払う。次に、第一順位の後払い金を支払う。この中には、監督、俳優、脚本家などのアバッブ・ラインで後払い契約を結んだ者への支払いが含まれる。その後、投資家への支払いが始まる。投資金額に限られる。その次に、第二順位の後払い金を支払い、利益が発生した場合には、投資家に配当がいく。投資回収と利益配当については、投資契約に従う。もちろん利益が発生しない場合もあり、「投資はリスクである」ことを如実に物語っている。

6.映画ファンド

映画資金回収リスクをヘッジする目的で、多くの投資家に対して小口でファンドを販売するのが映画ファンドだ。日本でも近年商品投資事業法が施行され、映画も投資対象と扱われるようになった。 7.さいごに 映画ビジネスは水物。映画一本では資金回収できない場合のリスクは伴う。したがって、何本かの映画をテリトリーでクロス(売れなかった映画を売れた映画の儲けでカバーしたり、売れなかったテリトリーでの赤字を、売れたテリトリーでの黒字で埋めるやり方)したり、他の投資と抱き合わせにして、リスクヘッジする方法がとられてきている。リスクがあると分かっていても、映画というクリエイティブで芸術性の高い商品に関与するという個人的な思い入れや、フィルムメーカーの庇護者となる機会をもてたことが、「利潤追求型の投資」とは一線を引いているのかも知れない。  

映像新聞2000年6月26日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
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