完成保証ボンドについて

 

完成保証ボンド

 制作会社が金融機関から制作費の融資を受ける際、必ずといって良いくらい要求されるのが「完成保証ボンド」だ。金融機関は配給契約を担保に融資する。配給会社は映画が完成しなければ保証額を支払う必要がない。映画は完成しなければ、金融機関は融資を回収できない。金融機関は、映画の完成を保証してくれる完成保証ボンドなしには融資しない。

映画の完成を保証する

 1950年からボンドを提供してきた老舗フィルム・ファイナンス・インクのスティーブ・ランソホフ執行権付副社長は、「完成保証ボンドとは、映画に資金を調達した人たちのために、映画が納期までに完成することを保証すること。」という。では、どうやって映画の完成を保証するかと言うと、(1)映画が予算を超え、資金難に陥った場合、完成するまで不足分を負担してくれる、または(2)制作会社から撮影中の映画を引き取り、自ら完成させる。最悪の場合は、金融機関に融資額を返済し、映画制作そのものをボツにする。

通常、撮影の始まる3〜10週間前からボンド会社が制作に関与する。金融機関同様、脚本、俳優、監督との間の契約書、配給契約、制作予算と撮影スケジュールなどありとあらゆる契約書を吟味した上、プロデューサーと面談を行い、制作側の人材が整備されているかどうかを確認する。そしてボンドを発行するかどうか決定すると、極めて慎重だ。いったん撮影が始まってしまうと、後戻りできないからだ。

撮影が順調に行なわれ、予算と期限内に映画が完成すれば、ボンド会社の手をわずらわせることはない。しかし、屋外で撮影する場合、雨も降れば、雪も降る。スターが怪我をしたり、病気になったりすると撮影はその分延びる。「グラディエーター」のように、俳優(オリバー・リード)が撮影中に死亡なんてこともありうる。不可抗力の場合はお手上げだ。しかし、機材が故障したり、特殊撮影が必要だったり、解決できるトラブルの場合には、ボンド会社は適切な人材をロケ地に送り込み、制作者側に指示を与えて、問題を解決する。

実際には、ボンド会社は、制作者に毎日、撮影の進行状況を報告させる。そして、スケジュール通りに撮影が行なわれているかどうかをチェックする。さらに制作者に、会計の週間報告を提出させる。制作費が予算をオーバーしないようチェックするため。ボンド会社は、制作者を管理するという役割を果たす。したがって、ボンド会社の人たちは、制作者以上に制作のノウハウに熟知していなければならない。

ボンド費用

ボンド費用は銀行からの借り入れ額に組み入れられるのが慣行だ。たとえば、制作費予算2,600万ドルの映画の場合。

(1)ボンド会社は手数料として予算の2〜3%を請求する(52万ドル〜78万ドル)。

(2) ボンド会社は、予算がオーバーした時の予備資金として、予算の10%を要求する(260万ドル)。

(3)銀行は融資手数料と借り入れ利息(融資額によるが、約100万ドル)を請求する

(4)制作に必要な一般的な保険(25万ドル)の他に、天候保険(50万ドル)と死亡保険を購入する。 弁護士費用。

(5)   撮影中の宣伝広告費(5万ドル)。

上記のような経費を前払いしなければならないので、銀行から3,000万ドル以上の借り入れが必要だ。

撮影中、天候や特殊撮影やさまざまの事情で、予算を超えそうな場合、ボンド会社は上記(2)の予備資金を使うことになる。その場合、使用金額や目的についてはボンド会社が裁量をもつ。もし、映画が完成するまでに予備資金を使い果たしてしまった場合には、ボンド会社が超過分を負担して映画を完成させることになる。そして、ボンド会社は映画の収益から、金融機関が融資額を回収した後、負担した超過額を回収する。だから予算を超えないようボンド会社は、映画のロケ現場に出向いて指示を与える必要があるわけだ。

 フィルム・ファイナンス・インクでは年間220本の映画にボンドを提供しているが、撮影を引き受けたのは2,000本中、8〜10本。映画そのものをボツにしたことは全くないという。ボンド提供先の内訳は85%が独立系制作会社、残りの15%はスタジオが制作する映画と、独立系の顧客が多数を占める。メジャー・スタジオ間の共同制作・共同配給が増える現状、完成保証ボンドの需要は高まる。

ライバルはシネマ・コンプリッションス・インターナショナルだ。アカデミー賞を受賞した「イングリッシュ・ペーシェント」(1996年)や「グリーン・デスティニー」「トラフィック」(いずれも2000年)にボンドを提供した。制作費予算250万ドルから7,500万ドルまでの映画にボンドを提供する。最高執行責任者のドナ・スミス社長は、「制作費の管理と撮影日程を守れる制作者にのみボンドを提供する」と、顧客選択に厳密だ。今まで制作をボツにしたことはないという

シネマ・コンプリッションス・インターナショナル、最高執行責任者のドナ・スミス社長。ドナ・スミスさんは、メジャー・スタジオのひとつであるユニバーサルで7年間にわたり映画制作を担当。「シンドラーのリスト」「ジュラシック・パーク」「バック・ツー・ザ・フューチャー」「ウォーターワールド」など約170本の制作現場を担当。女性で初めての現場担当のスタジオ幹部だ。約20年にわたる映画制作の経験を買われて、ボンド会社に引き抜かれた。

映像新聞2001年6月掲載  (c) 2001 Midori Mahl All Rights Reserved

 

 
For More Information
Internet: mahlesq@aol.com