映画資金調達 ー ルイス・ホロウイッツ・オーガニゼーションの場合

   

独立系映画会社の資金調達 

メジャー・スタジオは、自己資金と金融機関からの融資、そして外部からの投資を巧みに組み合わせて映画の製作資金調達する。とはいえ、製作費の高騰とはずれた時のリスクを考えると、ヒットしそうなイベント映画を年に数本製作し、その他の製作は人任せにして、配給に特化する傾向が強まりつつある。配給会社に映画を供給する独立系製作会社は、どうやって資金調達しているのか。そのひとつに、金融機関からの融資を受ける方法がある。といっても、金融機関が、完成予定映画のネガを担保に融資する訳ではない。担保となるのは、映画の配給契約である。配給会社が提供する配給契約を担保にして、金融機関が映画資金の一部を融資する。アメリカで発達した独自の映画資金調達方法は、1970年代後半から始まった。

ホーム・ビデオの登場

「ホーム・ビデオが独立系製作会社への資金調達を生み出した。」と語るのは、独立系製作会社に融資して25年以上になるルイス・ホロウイッツさん(ロサンゼルス在)。アメリカの銀行で、映画製作費を融資するビジネスを始めた草分け的な存在だ。20年前に独立して、ルイス・ホロウイッツ・オーガニゼーション(LHO)を設立。1年間に40〜50本の映画に資金を融資する。「70年代後半から80年代にかけて、ホーム・ビデオに加えて、テレビやケーブル、海外での配給網が広がり、映画ビジネスそのものが拡大した。」利益を生むビジネスに融資しない手はない。ホロウイッツさんが考えた融資方法とは、映画を配給する人たちが保証する契約、すなわち、配給契約を担保に製作資金を融資する方法だった。通常、配給会社は映画が完成すると、ネガの提供と同時に保証額(ミニマム・ギャランティー)を製作会社に支払う。製作会社は、映画が完成するまで保証額を受け取ることができない。もし、配給契約を担保に資金を融資してもらうことができれば、製作会社はすぐに製作を開始することができる。金融機関は、映画完成時に、配給会社から直接、保証額を返済してもらうことができる。

配給会社とは、北米はもちろんのこと、世界各国の配給会社をいう。国ごとにその保証額は異なる。メジャー・スタジオが北米の配給権を買う場合には、製作費の25%〜50%をカバーする。その他のメジャーな地域としては、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどの西欧諸国、そしてアジアでは日本、韓国などの配給権が前売りされていると、製作費のかなりの部分をカバーすることできる。それらの配給契約を担保に、金融機関が製作資金を融資する。ホロウイッツさんが確立したこの資金調達方法は、1992年まで彼の独壇場だった。ところが、1992年頃から、今まで配給契約を担保に融資したこともなかった銀行が、“儲かる”融資市場に参入し始めた。現在では、ユニオン・バンク、インペリアル・バンク、チェイス・マンハッタン・バンク、パリバといった大手の銀行が、映画資金を融資している。 

ギャップ・ファイナンス

 「銀行には、映画ビジネスに精通した人材がいないにもかからわらず、製作会社に対する融資額をどんどん増やしていった。そのため、1995年頃には、多くのアメリカの銀行が配給契約を担保にした融資ビジネスに参入していった。」と、ホロウイッツさんは語る。金融機関が資金を融資してくれるおかげで、製作会社は簡単に映画を作ることができるようになった。金融機関同士の競争も激しくなっていった。そして、銀行は、担保のない“ギャップ・ファイナンス”にも融資を始めるようになった。“ギャップ・ファイナンス”とは担保のある融資額(配給が確保されている金額)と製作費予算の差額を融資することを意味する。具体的には以下のようになる。

製作費予算 250万ドル
配給契約 150万ドル
自己資金  50万ドル
ギャップ  50万ドル

製作会社は、配給契約のある150万ドル分については、これを担保にして資金を借り入れることができる。自己資金と合計すると、200万ドルまでの資金調達が可能となる。製作費予算との差額である50万ドルがギャップとして残る。このギャップへの融資が“ギャップ・ファイナンス”である。つまり、配給契約という担保のない融資である。ホロウイッツさんは、「1995年頃から、金融機関は、“ギャップ・ファイナンス”に積極的になった。ときには、ギャップが50〜60%ある場合でも、無担保の融資を行ってきた。その結果は、惨憺たるものであった。」と“ギャップ・ファイナンス”の危険性を強調する。簡単に融資が受けられるため、製作会社は安易に映画を作ってしまう。本来だったら作られるべきでない映画が市場に出てしまった。その結果は、商品過多となり、配給されない映画で市場が溢れた。配給されなければ収益を生まない。収益がなければ融資を返済できない。その上、アジア市場の崩壊が一挙におしよせ、最悪の事態となった。金融機関は、回収できない債権をかかえることとなり、映画市場を大きく揺さぶった。 

“ギャップ”は20%以内

「資金過多による映画の大量生産の時代は終わった。」商品が溢れすぎれば、市場がパンクするのは当然の結果だった。「無担保の“ギャップ・ファイナンス”は危険。LHOでは、ギャップは20%以内に抑えている。」と、ホロウイッツさんは言う。では、LHOで融資を受けるためにはどうしたら良いか。まず、脚本とキャスティングが決まっていなければならない。そして、詳細な製作費の見積もり。配給の決まっている地域については、配給契約書。映画の完成を保証する、完成保証ボンドを購入していること。これらが必要条件だ。LHOでは、これらの書類を分析して、融資の条件を決める。融資の期間は通常、14ヶ月から18ヶ月。金利はプライム・レートの2〜2.5%加算額が適用される。その他、融資手数料がかかる。これには二通りある。担保のある融資額については、融資額の2〜2.5%の手数料がかかる。ギャップの手数料は、ギャップの金額の7%と高めだ。といっても、これらの数字はあくまでも参考まで。融資期間、予算、配給会社のクレジット歴やギャップの割合、配給の決まっていない地域など、多くの書類を分析して融資を決定する。注意しなければならいないのは、製作資金の見積もりの中に、金融機関への融資手数料、セールス・エージェントの手数料、完成保証ボンドの費用、過誤保険料、弁護士費用といった諸経費を入れておくこと。

 

映像新聞2001年5月28日掲載  (c) 2001 Midori Mahl All Rights Reserved

 

 
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