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映画製作会社の形態とスタッフ編成 |
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1.はじめに アメリカで映画製作を行うにあたって、受け皿となるものが必要だ。個人でビジネスをするのが良いか、会社にするのが良いか、会社にはどういった形態があるのか、法的責任や税金問題はどうなるのか、以下に解説する。 2.製作会社の形態 ソール・プロプライエターシップ:個人でビジネスを始める手続きは簡単だ。ビジネス名を登録し、ビジネスライセンスを取得すれば良い。DBAとよばれるビジネス名を使い、銀行口座もビジネス名で開くことができる。会社のように二重課税されない。ただし、気をつけなければいけないのは、会社のような法的な保護がない。すべて無限責任となり、ビジネス上の責任が個人財産にまで及ぶ。映画製作を行う場合、保険や撮影許可など個人では取得することが煩瑣な場合が多い。保険会社は個人よりも会社との間で契約する方を好む。 パートナーシップ:2名以上の人がパートナーを組む場合はどうか。ジェネラル・パートナーシップだと、パートナーが他のパートナーの行動に対して、すべて無限責任をもつことになる。無限責任は不安要素だ。これに対して、リミテッド・パートナーシップは無限責任と有限責任の2種類のパートナーから成る。経営者は無限責任パートナーとなり、リミテッド・パートナーシップの負債の支払い責任を負う。有限責任パートナーは経営に参加しない代わりに、無限責任を負わない。投資額の負担だけで済む。 株式会社:株式会社のメリットは、有限責任にある。株主は個人責任を負わない。株式を発行して資金を集めることができる。税務上のデメリットは、二重課税。会社の収入に課税された上、配当がある場合、株主に対してまた課税される。 リミテッド・ライビリティ・カンパニー:有限責任と税務上のメリットを組み合わせた形態がLLC(リミテッド・ライアビリティ・カンパニー)だ。有限責任でありながら、税務上は個人に課税される。原則として、会社はミニマムの州税を支払えば良い。パートナーシップと株式会社の中間形態だ。州によっては、2名以上のメンバーを必要とする。近年、カリフォルニア州でもひとりでLLCを設立することができるようになった。しかし、アメリカで税金申告の必要があるので、誰でもLLCをつくるのが良いという訳にはいかないであろう。どういった形態が好ましいかはケース・バイ・ケースであろう。 3.雇用契約 製作会社の形態が決まったら、人材の採用を行う。プロデューサーは、脚本家を雇って、映画の基本となるストーリーを脚本化する。既に完成している脚本を買い取る場合もある。近年では、脚本を書き、監督、プロデュースをしたり、さらに、自ら出演したりするマルチ・タレントが増えている。たとえば「シックス・センス」。ナイト・シャマラン監督は脚本を書き、監督することを条件として売り込んだ。「ゴッドファーザー」のフランシス・フォード・コッポラ、「スターウォーズ」のジョージ・ルーカス、「ターミネーター」「タイタニック」のジェームス・キャメロンといった大御所から、インディ系映画でブレイクした「マトリックス」のウォシャウスキ兄弟、「ファーゴ」のコーエン兄弟、「ミスター・ダマー」「メリーに首ったけ」のファーレイ兄弟や、「スリング・ブレイド」のビル・ボブ・ソーントンなど。脚本はもちろん、監督や時には主演までこなすマルチ・タレントの出現で、職域の垣根がくずれつつある。ひとりで何でもこなす場合でも、雇用契約は異なるので注意が必要だ。 脚本家との契約:脚本家がWGA(Writers
Guild of America)という脚本家組合に所属する場合、組合の規則に従わなければならない。アメリカには、脚本家組合の他、俳優のための組合として、SAG(Screen
Actors Guild)、監督のための組合として、DGA(Directors
Guild of America)がある。組合に所属する脚本家はミニマムの報酬が決められ、保護される。プロデューサーは、脚本家との間で雇用契約を結び、脚本家に脚本を書かせる。脚本家は報酬を受け取り、脚本を仕上げる。できあがった脚本は、お金を支払ったプロデューサーが権利を買い上げる。「職務著作」と呼ばれる。脚本家は、決まった報酬の他、ボーナスとして収入のパーセンテージを契約することが多い。脚本家は、プロデューサーの受け取るネット収益(興行収入ではない)の5%で合意するのが多い。しかし、ネット収益の計算はスタジオ側の任意によるので、脚本家が実際にペイチェックを受け取ることができるかどうかは定かでない。 また、脚本が買い上げられた場合、映画化するかどうか、プロデューサーの意のままとなる。したがって、脚本が出来上がっていても、映画にならないで棚上げされる脚本も多い。映画化されない場合には、収益は生まれないので、収益参加は全く意味のない約束となる。クレジットもない。 脚本家にとって、クレジットは重要。将来の仕事への登竜門となる。単独のクレジットなのか、共同クレジットなのか、クレジットなしか、ハリウッドでは争われることが多い。何故かと言うと、製作会社やスタジオは脚本を何回も何回も書き直させる。数人の脚本家が手を加えていると、最初の脚本と出来上がった映画の脚本が違ってくる。誰がどこまで完成品に貢献しているのか、クレジットを争う場合、組合が仲裁を行う。 監督との契約:組合員の所属する監督は、組合の規則でミニマムの報酬が保証される。監督は、一定の金額で雇われるが、プリプロと呼ばれる準備期間、撮影期間、ポストプロ、編集などいくつかの段階ごとに支払われる。通常「ペイ・オア・プレイ」と言われ、映画が途中でボツになっても、契約金額は支払ってもらえる。監督が「ファイナル・カット」をもつかどうかが重要だ。スタジオは商業性を重視するので、監督に内容のコントロールを与えすぎるのを好まない。 俳優との契約:組合員を雇う場合、組合の規則に従う。俳優組合は、映画会社や製作会社との間で、俳優が、映画やテレビ番組に出演した場合の条件等について契約をもっている。この契約が2001年7月に切れる。現在、組合は映画会社らと更新の条件を煮詰めている。業界では、もし、更新の条件が合意できない場合には、ストは必至と憶測される。そのため、俳優を確保できる今のうちに撮影を済ませてしまおうと、映画会社は撮影ラッシュになっている。 5.さいごに 映画作りは多くの人たちの共同作業。アイデアから始まり、映画が完成品になるまでの道のりは長い。資金もかかる。映画は完成したら売らなければならない。映画は配給されてはじめて収益を生むからだ。そのためには、権利関係がクリアでなければならない。製作過程で、ひとつひとつ権利関係をクリアしながら、契約を結んでいく。煩瑣な手続きだ。しかし、この手続きを怠ると、どんなにすばらしい映画でも、配給会社を得ることは難しい。映画は商品だから。 映像新聞2000年10月30日掲載 (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved
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