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ピノキオは誰のもの? |
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映画化権をめぐる訴訟:コッポラ対ワーナー・ブラザース 1.8,000万ドルの賠償判決 ハリウッドで契約書にサインしないで映画を制作した場合、いったい誰がその映画の権利をもつのでしょうか? 「ゴッドファーザー」や「地獄の黙示録」などの映画で有名なフランシス・フォード・コッポラ監督がワーナー・ブラザース(「ワーナー」)を相手に、「ピノキオ」の映画化権をめぐり、訴訟を起こしていました。1998年7月、ロサンゼルス上級裁判所は、ワーナーに対して、2、000万ドルの損害賠償と6,000万ドルの懲罰的損害賠償をコッポラに支払うよう陪審判決を言い渡しました。しめて、8,000万ドルの損害賠償命令。この金額はハリウッドがらみの裁判で最も巨額な賠償金額。陪審員らは、コッポラとワーナーとの間に正式な契約書がないこと、ワーナーが不正に干渉したためコッポラはコロンビア・ピクチャーズ(「コロンビア」)で「ピノキオ」映画の制作がストップされたことを認めました。 2.「ピノキオ」事件 今から10年前、コッポラは息子の死をきっかけにパブリック・ドメインの原作を基にして「ピノキオ」の実写の映画化を企画しました。1991年、コッポラはワーナーにこの「ピノキオ」プロジェクトを持ち込みました。 その後2年に亘り、コッポラとワーナーは交渉に交渉を重ねましたが、制作費やコッポラのプロデューサー兼監督料で合意にいたりませんでした。何故かというと、コッポラはワーナーに対して、プロデューサー兼監督料として、500万ドルプラスグロス収益の15%を要求してきたからです。その間、ワーナーは脚本家を雇い、コッポラのアイデアに基づいた脚本を書かせるなどのディベロップをしてきました。コッポラはワーナーとの間で、雇用契約を結んでいましたが、制作に関する正式な契約書はサインしていませんでした。制作に関する契約書はワーナー側がドラフトし、コッポラの弁護士に渡しましたが、このドラフトはコッポラの弁護士の机の上で16ヶ月間眠っていました。したがって、制作に関する契約書がサインされることはありませんでした。 争点となったのは、コッポラとワーナーとの間で「ピノキオ」制作の合意があったかどうか、そして、コッポラとワーナーとの間でサインされた雇用契約は、コッポラを法律的に拘束するものかどうかでした。 3.コロンビアとの契約 コッポラは、ワーナーで「ピノキオ」プロジェクトが頓挫したため、次にコロンビアに話を持ちかけました。コロンビアは、1992年の思いがけない大ヒットとなった「ブラムストーカーのドラキュラ」を制作したコッポラに対して、破格のディールを与えました。誰もが欲しがるスプリット・ライツを与えたのです。スプリット・ライツにより、コロンビア・ピクチャーズはコッポラに制作費の50%を作品完成時に支払い、北米とカナダでの配給権を30年間ライセンスします。コッポラは、北米とカナダ以外の地域で、プリセールを行うことにより、残りの制作資金をファイナンスする予定でした。コッポラとコロンビアとの合意は、まさにコッポラが長い間希望してきた内容でした。スタジオからの50%出資と引き替えに北米・カナダでの配給権を与え、映画の著作権はコッポラが保有するというものです。コッポラはコロンビアとの間で1994年6月14日付けで契約を結びました。 4.ワーナーの対応 2年間コッポラのために「ピノキオ」の映画化をディベロップしてきたワーナーとしては、面目がたちません。ワーナーから解放されたと思い、コロンビアにプロジェクトを持ちかけたコッポラに対して、ワーナーは「ピノキオ」を制作する権利はワーナーにある、コッポラはコロンビアで「ピノキオ」を制作することはできないと通知しました。ワーナーとコッポラとの間のトラブルに気づいたコロンビアは、コッポラに対して、ワーナーとの問題を円満解決することを出資の条件としました。 ワーナーの対応に憤慨したコッポラは、1995年9月13日、ロサンゼルス上級裁判所で、ワーナーを相手に「ピノキオ」の映画化権は自分にあると主張し、提訴しました。 5.職務著作と著作権 コッポラがワーナーと交渉してきた契約内容は、職務著作でした。通常、スタジオは映画制作費を100%出資し、その代わりに完成した映画の著作権を確保します。プロデューサー、監督、脚本家たちは、スタジオにお金で雇われ、完成した映画に権利を持つことはありません。出資した人が権利をもつ。これが職務著作です。アメリカの著作権法上、職務著作は、書面で明確に記載しない限り、職務著作とはなりません。にも拘わらず、ハリウッドでは、契約書にサインすることなく、映画の制作を始めてしまうことが多々あります。もともと、人間関係や力関係が幅をきかす世界であるため、信用だけで何億というお金が動いてきたのです。 コッポラ自身も今まで契約書なしに映画を制作してきました。1996年にワーナーが配給した「秘密の花園」は、コッポラ制作によるもの。コッポラは、これ以外にもワーナーで「フーバー」という映画をディベロップしています。コッポラはどちらも契約書にサインをしていません。しかし、この2作については何もクレームしていません。 6.陪審裁判の怖さ ロサンゼルスの陪審員は、ワーナーを相手どって「ピノキオ」制作を妨害した損害賠償として500万ドルを請求していたコッポラに、合計8,000万ドルの損害賠償を与える判決を下しました。コッポラという同情を引くのに最適な個人対潤沢な資金と巨大な組織をもつ映画スタジオの法廷ドラマ。陪審員は明らかに原告を支持しました。ある陪審員はこう言っています。「ワーナーが特に不正なことをしたという事実を見つけることはできなかった。でも、ワーナーのエグゼクティブたちが法廷で傲慢そうに見えた。」 ワーナー側は控訴を準備しています。コッポラは果たして8,000万ドルの損害賠償額を維持できるでしょうか。法廷映画「レインメーカー」を作ったコッポラは、自らの法廷ドラマを演じています。 この裁判からの教訓として、ハリウッドでは、契約書なしのビジネス慣習を改めることになるでしょう。これは逆にクリエイティブな仕事に携わる人たちにとって窮屈な足かせとなることでしょう。しかし、権利関係をきちんと処理しないと、訴訟という高いツケが回ってくることになるのでいたしかたありません。 映像新聞1998年8月31日号掲載 (C) 1999 Midori Mahl All Rights Reserved |
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