プロダクトプレースメント

 

高騰する映画製作費対策:大流行の商品タイアップ

1.プロダクト・プレイスメントとは

「ゴールデンアイ」「トュマロー・ネバー・ダイ」ですっかりジェームス・ボンドの愛車となったBMW。「インディペンデンス・デイ」では、ジェフ・ゴールドブラムはアップルのパワーブックを使って、エイリアンの母船を破壊します。そのキャッチ・コピーは「Power to Save the World」。今夏のヒット映画「ハルマゲドン」では、日本企業が新商品を紹介。ブルース・ウイルスがゴルフ・ボールを打つシーンで登場しています。ハリウッド映画ではプロダクト・プレイスメントが大流行。どの映画にもおなじみのプロダクトが溢れています。

2.プロダクト・プレイスメントの元祖

スピルバーグ監督の「E.T.」がアメリカで劇場公開されたのは1982年。映画の中で、エイリアンがリースのキャンディを食べたり、クアーズのビールを飲んだりします。この映画のおかげでリースキャンディの売り上げが65%アップしたそうです。エイリアンがキャンディを食べるなんてとんでもないとスピルバーグ監督の申し出を断ったライバル会社のエム&エムは、リースの思わぬ成功にくやしがったとか。 ハリウッド映画は、アメリカでの劇場公開の後、ホーム・ビデオ、ペイ・パー・ビュー、無料テレビ、海外での公開へと販路を広げます。映画ビジネスは、当たると大きいが、失敗しても大きい投資ビジネス。近年では、映画のプロダクション・コストが高騰し、マーケッティング・コスト(プリント代、宣伝広告費など)もうなぎ登り。スタジオは、映画をマーケットするため、プロダクション・コストの20%から30%の金額を使っています。プロダクト・プレイスメントは高騰するハリウッド映画のコスト負担をシェアする目的で頻繁に利用されています。

3.ハリウッド映画のメディア宣伝広告費

以下のチャートは、1997年5月から9月の間にアメリカで劇場公開されたハリウッド映画に、スタジオがどのくらメディア広告費が使ったかを示すものです。メディア広告費は1997年1月から9月末までの合計です。ボックス・オフィス(B.O.)総額が24億ドルに対して、55、200万ドルのメディア広告費を使ったことになります。メディア広告費のボックス・オフィス総額に対する割合は23%です。 

*金額は100万ドル単位

順位

映画タイトル

アメリカでの劇場収益B.O. メディア広告費割合 広告費対B.O.の合計 雑誌、新聞 テレビ(有料、無料)ラジオ
アナスターシア 53.0 30.1 57% 5.3 24.8
アミスタッド 26.7 22.9 86% 4.8 18.1
ロストワールド 229.1 22.4 10% 5.1 17.3
フラバー 83.1 21.9 26% 4.0 17.9
コン・エア 101.1 21.4 21% 4.1 17.3
ヘラクレス 99.1 20.6 21% 5.1 15.5
フェイス・オフ 112.3 20.2 18% 4.0 16.2
トゥモローネバーダイ 92.4 20.1 22% 2.4 17.7
マウス・ハント 40.0 19.8 50% 2.1 17.7
10 スクリーム2 85.5 18.6 22% 2.4 16.2

(Hollywood Reporter資料)


4.プロダクト・プレイスメントの利点

ハリウッド映画は、アメリカで数週間から数ヶ月の間劇場で上映されます。映画によってはアメリカでの公開とほぼ同時もしくは数週間で海外上映されるものもあります。劇場公開から約6ヶ月でホーム・ビデオが店頭に並び、その後ペイ・テレビで放映されます。飛行機内の上映、世界各国のホテルでのペイ・テレビでの放映、そして、無料テレビでの放映とかなり長い間、多くの人々の目にふれることになります。 あるプロダクトをハリウッド映画にのせ、映画のプロモーションとタイアップした広告活動を行った場合、今までの一般メディアでの露出度に較べて2.5倍のブランド記憶が可能になるということです。その理由として、映画観客は有料で映画を見ているので、スクリーンへの集中度が高いこと。映画鑑賞中は、電話や雑用、コマーシャルといったブレイクが入らないこと。観客の大半が購買力をもった人たちであること、などが挙げられています。 有名タレントをコマーシャルに起用すると、タレント料・制作費だけで数億円かかるでしょう。もし、有名タレントにプロダクトを映画で使ってもらい、そのフッテージを日本でのコマーシャルに流したり、そのタレントが映画のプロモーションで来日する際、プロダクトと映画のクロス・プロモーションをすることができると、プロダクト・プレイスメントの利点を最大限活用することが可能でしょう。

5.プロダクト・プレイスメントの注意点

映画の目的はあくまでも映画であって、プロダクトの広告ではありません。プロダクトがどのような形で、どのくらいの間、観客の目にはっきりと、画面に現れるかどうかは出来上がってみないと分かりません。すべてクリエイティブ・コントロールを握る監督の裁量にかかっています。もし、最終エディティングでカットされてしまったり、希望通りのプレイスメントでないこともあり得ます。また、プロダクトの商標、著作権がきちんとクリアランスされているかどうかも大切です。もし、プロダクトの商標や著作権に問題があると、映画そのものが上映できなくなる危険性があります。 6.最後に ハリウッド・ビジネスはいつも新しいディールを考えています。前例のないディールを行うときには、どういった内容の契約をしているのか慎重に考えてビジネスを進めたいものです。

映像新聞2000年8月28日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
For More Information
Internet: mahlesq@aol.com