98年ハリウッド映画

 

劇場収益は59年から上昇の一途:

製作費の高騰を回避

1.1998年度ハリウッドスタジオの劇場収益
アメリカでの昨年度のハリウッド映画の劇場収益は69.7億ドルを記録しました。1997年の劇場収益の7%アップとなっており、ハリウッド映画の劇場収益は1959年以来躍進し続けています。
ハリウッドスタジオ(ワーナーブラザース、20世紀フォックス、ソニー・ピクチャーズ、パラマウント、ディズニー、ユニバーサル、MGM、ドリームワークス)の中でも、とりわけ業績が目立ったのはディズニーとパラマウント。それぞれ、10億ドルの劇場興行収益を記録しています。
以下は、アメリカでの各スタジオの劇場公開映画本数、興行成績とマーケットシェアを示しています。

スタジオ

公開映画本数 劇場収益(百万ドル) マーケットシェア
ワーナーブラザース(ニューラインシネマ) 25(13) 755.8(537.2) 11.2%(7.8%)
ディズニー 22 1,110 16.4%
パラマウント 13 1,050 15.5%
ソニーピクチャーズ 32 741.8 10.9%
20世紀フォックス 13 716.3 10.6%
ドリームワークス 464.5 6.8%
ユニバーサル 15 390.6 5.7%
MGM 10 182.0 2.6%

2.1998年度ハリウッド映画トップ10

アメリカでの劇場興行成績トップ10は以下のようになっています。

映画タイトル

配給スタジオ

劇場収益(百万ドル)
アルマゲドン ディズニー 201.6
プライベート・ライアン ドリームワークス 190.4
メリーに首ったけ 20世紀フォックス 175.0
ウォーターボーイ ディズニー 150.2
ドクタードリトル 20世紀フォックス 144.1
ディープ・インパクト パラマウント 140.5
バッグスライフ ディズニー 137.6
ゴジラ ソニーピクチャーズ 136.0
ラッシュ・アワー ニューラインシネマ 134.8
リーザル・ウエポン4 ワーナーブラザース 129.7

確かにこの表をご覧になると、ディズニーの好成績が目立ちます。アメリカでの劇場収益第1位に輝いたのは「アルマゲドン」。ブルース・ウイリス主演のアクション・アドベンチャー映画で、その制作費は15,000万ドルと言われています。通常、劇場収益の半分が配給会社に支払われ、映画をマーケットするための費用は制作費の20%から30%かかりますので、「アルマゲドン」がアメリカでブレイク・イーブンするためには、33,000万ドルから40,000万ドルを劇場で稼がなければなりません。「アルマゲドン」の全世界からの劇場収益は50,000万ドルと報告されていますので、海外でのマーケッティング費用を考慮すると、やっとブレイク・イーブンになったということになるでしょうか。しかし、劇場公開後の第二次マーケット(ホームビデオ、ペイ・パー・ビュー、ケーブル・テレビ、無料テレビ)からの収益はすべてディズニーの収益となりますので、やはり収益の良い映画ということでしょう。
これに対して、「メリーに首ったけ」は、低予算の映画。メジャーなスターは出演していませんが、脚本のおもしろさが売りのコメディー映画です。制作費は約3,000万ドルから4,000万ドルと言われています。マーケティング費用を考慮しても、すでにアメリカ国内だけで17、500万ドルの劇場収益を記録していますので、かなり収益率の良い映画と言えるでしょう。また、「ウエディング・シンガー」でブレイクしたコメディアン出身のアダム・サンドラー主演の「ウオーターボーイ」も同様です。低予算で収益率の良い映画の見本です。
 
3.スプリットライツ
スプリットライツというのは、スタジオ間で、制作費を共同で出資し、共同で配給することを言います。原作権、脚本費、スターサラリー等の高騰による制作費を共同で負担し、リスクを分担します。
上記の表では、「プライベート・ライアン」と「ディープ・インパクト」がスプリットライツによるものです。
「プライベート・ライアン」では、ドリームワークスとパラマウントが共同出資。ドリームワークスが国内の配給を、パラマウントが海外で配給を担当しました。「ディープ・インパクト」では、逆にパラマウントが国内の配給権を、ドリームワークスが海外での配給権を取得しました。
パラマウントは、「タイタニック」でフォックスの制作にスプリットライツという形態で投資することにより、20,000万ドルを超えると言われる制作費の内、たった6,500万ドルを出資することにより国内での配給権を手にして、世界中からの収益配分に参加することができた訳ですが、その手法をドリームワークス相手にも駆使しています。
 
4.リスク回避の方法
ハリウッド・スタジオのエグゼクティブたちの頭を悩ませているのは、いかに優れた作品を提供することのできる制作会社とのパイプを強めながら、制作費を抑えていくかでしょう。
ワーナーブラザースでは、アップフロントの費用を抑えながら、バックエンドもしくはグロス収益参加者を増やす努力をしています。最近では、ディズニーが脚本家らとの間で、バックエンドでのパーセンテージを保証する方法を採用しました。制作会社との間の共同出資、共同配給も増えています。
スタジオでは、ネガティブピックアップ、プリセールを行うことにより、制作費の負担を軽減する方法も多く取られています。
しかし、ネガティブピックアップ、プリセールをしてしまうと、テリトリーごと、メディアごとに、権利がバラバラになるおそれがあります。スタジオによっては、リスクの高い映画に投資するよりも、低予算の映画を作ることによって、全世界のオールライツを確保し、劇場配給のマーケティング、ホームビデオ、ペイテレビ、無料テレビ等のあらゆるウインドウでのコントロールを握ることがもっとも収益につながると考えているところもあります。

5.99年のハリウッド映画
今年もハリウッド映画は、数本の高額なイベント映画と収益率の良い低予算映画の組み合わせがラインアップされています。
特に注目されるのは、「スターウォーズ」の前編第1部の公開。監督であるジョージ・ルーカスが自ら制作費を負担し、著作権を確保します。配給会社は20世紀フォックス。フォックスは「スターウォーズ」の前編3部作の全世界配給権を取得するために、ルーカス監督に特別な配給パーセンテージを与えていると言われています。今年も、ハリウッドスタジオは巨大な資金力をバックに、あらゆるウインドウを最大限に利用した多角ビジネスを展開していくことでしょう。

映像新聞2000年8月28日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
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