揺れるハリウッド

 

相次ぐ映画ロケの海外流出

1.映画ロケの海外流出

映画の都ハリウッドでの映画制作が減少している。映画やテレビ番組の制作会社は、ハリウッドでの制作費高騰から、政府の補助金や人件費の安い海外に制作ロケを移しています。カリフォルニア州でのロケ本数は1998年、前年に比べて20%減りました。カリフォルニア州で7,500万ドルの経済を支える映画ビジネスが危機に面しています。

2.制作費の高騰

全米映画協会の調査によると、1998年のボックス・オフィス収益は69.7億ドルを記録し、前年に比べて7%のアップとなっています。劇場映画の制作費は一本当たり平均5,270万ドルで、前年比1.4%の減少となっている、とはいっても、原作権の取得、脚本費、スターの出演料の高騰が、映画会社の収益を圧縮しているのが現状です。映画をヒットさせるためには名前の売れた俳優や監督を起用しなければならない。名前の売れた俳優や監督を使ったとしても、映画が確実にヒットするという保証もない。映画会社では、映画がヒットした場合に、ボックス・オフィス収益のパーセンテージを俳優、監督、脚本家に与えることにより当初の制作費を抑えたり、制作拠点を人件費の安く、政府補助金のでる海外に移したりして、制作費高騰に対応しています。政府からの補助金や税金面の優遇措置を与えていないカリフォルニア州では、ハリウッドでの制作本数は減る一方。映画産業全体に与える経済的効果や映画関係者の失業など深刻な問題となっています。 1998年にカリフォルニアで制作された劇場用映画の本数は、前年の637本から510本に減少しています。昨年アカデミー賞を受賞したドリームワークス配給の「プライベート・ライアン」や、ミラマックス配給の「恋に落ちたシェークスピア」、今年のヒット作ワーナーブラザース配給の「マトリックス」、フォックス配給の「スターウォーズ」などもカナダ、ヨーロッパ、オーストラリアなどで撮影されました。特にお隣のカナダでは、政府が補助金制度をバックアップし、映画ロケを歓迎しています。映画ロケは、地元の映画関係者の雇用を促進する他、飲食、宿泊、小売といった間接的な消費が行われ、観光地としてのイメージ・アップにもつながるとあって、カナダ各地でのロケは急激に増加しており、1997年から98年の間に55%上昇しています。1998年には、70本の劇場用映画、200本のテレビ用映画、20から25本のネットワーク、ケーブルでのシリーズ番組がカナダで撮影されました。総額80億ドル以上のお金がカナダで使われました。その内訳は、52億ドルがブリティシュ・コロンビアに、12億ドルがオンタリオに、10億ドルがケベックに流れました。そのあおりを受けて、1998年ハリウッドで制作された映画とテレビ番組の総日数は前年に比べて2,655日も減少しました。

3.カナダの政府補助金制度

カナダでは、カナダ人を雇ってカナダで映画を制作する場合、連邦政府と自治体から二重の優遇措置が与えられます。現在カナダ政府の文化工業局の一部となっているCAVCO(「カブコ」)という省庁が発表している税制優遇措置によると、カナダ人を雇って映画を制作した場合、最高で約20%の税金還付を受けられます。カナダ人の雇用度合いによって還付金額が決まります。制作予算1,000万ドルで、カナダで、カナダ人を6ポイント以上使って映画を制作した場合、約200万ドルの税金が還付されます。簡略に説明すると、    


   1)制作予算       1,000万ドル
   2)自治体からの税金控除分   96万ドル
   1から2を差し引いた制作費  904万ドル

   3)904万ドルの制作費のうち、人件費の48%までが控除
     904万ドルx48%   433万9,200ドル
   4)433万9,200ドルのうち、25%が還付
     433万9,200ドルx25%  108万4,800ドル

   連邦政府と自治体からの税金還付額
   2と4の合計     204万4,800ドル

連邦税金還付の対象となるのは、904万ドルの制作費。カナダ人を雇った場合、人件費48%までが控除となり、そのうちの25%が還付されます。したがって、904万ドルの48%である433万9,200ドルのうち、25%に当たる108万4,800ドルが連邦政府から還付されます。自治体からは96万ドルが還付されるので、合計204万4,800ドルが還付されることになります。この金額は、カナダの制作会社に限られます。カナダ以外の制作会社が、カナダ人を雇用して映画を制作した場合には、上記とは異なったパーセンテージが適用されます。その場合、連邦政府と自治体からの税金還付は、制作費の約17%となります。カブコは日本企業との間の共同制作についても税制優遇措置を与えています。カブコの連絡先は、Canada Audio-Visual Certification Office, Dept. of Canadian Heritage, Les Terrasses de la Chaudiere, 113-15 Eddy Street, 6th Floor, Hull (Quebec) K1A 0M5です。 税金還付の他、カナダの人件費がハリウッドでの映画関係者よりも20から30%安く、またカナダ・ドルが弱いこともあり、ハリウッド映画のカナダ流出は続いています。

4.カリフォルニア州法案

1997年と98年の間にハリウッドでは11,000人分の雇用が失われました。ロケ拠点の海外流出により失業の危機に面したハリウッドの映画関係者たちは、デモ・集会を行い、またカリフォルニア政府に対し、制作費の6%もしくは10%の税金還付を立法化するよう働きかけています。 1990年代に入り、マルチメディア化による映画産業の急成長がハリウッドでの雇用を支えてきました。映画ビジネスは収支決算ビジネス。制作条件の良い場所にロケ拠点が移ってしまうのは当然の流れ。制作費、人件費の膨れ上がってしまったハリウッドは、ロケ空洞化をくい止めることができるでしょうか。


映像新聞2000年8月28日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
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