デジタル時代の法律

 

映画シーンの2次使用

1.はじめに

ディジタル・テクノロジーの発展により、ソフトのイメージを変更したり、追加したりすることが容易になりました。例えば、エルビス・プレスリーとマドンナを共演させたり、エリザベス・テイラーをコマーシャルに出演させたりする場合、どういった法律問題をクリアしなければならないか?ソフトの利用と新しいメディアの接点について考えてみましょう。

2.肖像権の問題

マリリン・モンローが地下鉄の通風口に立っていると、風が吹いてスカートがまくれ上がります。これは「7年目の浮気」でとても印象的なシーン。ポスターでもおなじみです。もし、このシーンをコマーシャルに使ったり、ビデオ・ゲームのワンシーンに使用したい場合、どういった点に注意しなればならないでしょうか。 まず、肖像権の問題が発生します。肖像権とは、ある特定の人の名前、写真、イメージなどを商業目的で使用する場合、本人もしくは遺族、エステートなどの同意を得なければなりません。肖像権にはコマーシャル価値がなければなりません。肖像権はコモン・ローで規定されていますので、各州によって扱いが異なります。肖像権の持ち主の死亡とともに消滅すると規定している州もあれば、死亡後50年間存続するところもあります。また、永久に肖像権が生き続ける場合もあります。モンローが「7年目の浮気」の映画に出演した際、制作会社にどのくらいの範囲で、自分の肖像権を許諾していたのかにもよります。許諾の範囲内であれば、モンローのエステートからの同意は必要とされません。

3.著作権との関係

映画ソフトをディジタル化して、DVDやビデオ・ゲームなどの第二次的な著作物を作る場合、肖像権の問題の他に、著作権についても考えなければなりません。 アメリカの著作権法では、著作権は、「創作が有形的媒体に固定された」時に発生すると規定しています。著作権者は、独占的に、その著作物のコピーを販売したり、これに手を加えることによって第二次的著作物を作成することができます。ソフトの著作権を持っている人は、これを利用して、ホーム・ビデオを作ったり、DVD化したり、ビデオ・ゲーム化することができます。ソフトを第二次利用する際、そこに出演しているスターたちからの別途の同意が必要となるでしょうか。判例によると、出演者がその肖像権の利用について、将来のメディアでの使用について包括的に同意している場合、肖像権の問題は、著作権法によって管轄を排除されるので、著作権者は、スターからの新たな同意をとる必要はないとされています。 したがって、モンローのある映画シーンをビデオ・ゲームで使用する場合、モンローのエステートからの同意が必要かどうかは、モンローと映画会社との間の契約でどの範囲まで肖像権の使用が許されていたかどうかによります。もし、将来に亘ったすべてのメディアについての使用が許諾されている場合には、映画の著作権者からの同意だけで足ります。通常、ハリウッド・スターたちは、肖像権の使用を映画の宣伝・広告に限定している場合が多いので、その場合には、別途の同意が必要とされるでしょう。近年のハリウッド・スターたちは、肖像権の価値をよく認識しているので、肖像権の使用についてイメージをこわさないようにとても気を使っています。肖像権の使用を許諾する際、スタジオに対し、メディアごとに同意をとるよう要求したり、映画のプロモーションについても、フッティジのサイズ、共演者との対比、使用態様など詳細にチェックしています。

4.フレッド・アステアの肖像権

今は亡きダンサー・俳優フレッド・アステアの肖像権をめぐり、アステアの遺族とビデオ会社との間で訴訟が行われました。どういった訴訟かといいますと、ベスト・フィルム&ビデオというビデオ制作会社が、アステアが主演した映画「セカンド・コーラス」と「ロイヤル・ウエディング」からの映像クリップ90秒を、ダンス教材ビデオの頭出しの部分に使用して、販売していました。その際、ベストは、アステア自身からその肖像権使用について、サブ・ライセンスを受けていました。従って、ベストとアステアの遺族の間で、アステアの名前と写真を使用することについての争いはありませんでした。争点となったのは、映像クリップ90秒に現れているアステアの肖像権について、ベストがアステアの遺族からライセンスを受けるべきかどうかでした。 カリフォルニア州の法律では、コマーシャル価値をもつ死亡した人の肖像権を使用する場合、その遺族の同意を必要としています。例外として、演劇、書籍、雑誌、新聞、音楽、映画、ラジオもしくはテレビ番組に使用し、付随的にこれらを宣伝する場合で、宣伝や広告を主目的としたものでない場合や、報道ニュースなどを目的とする場合に限って、肖像権の使用についての同意を受けなくても良いとしています。一定の場合に、アメリカ憲法の根幹である表現の自由、報道の自由を優先させたからです。 ベストが、アステアの遺族の同意を受けずに、アステアの映像クリップを使用した行為は、例外に当たるかどうかが連邦地裁と第9巡回控訴裁判所で争われました。ベストの制作したダンス教材ビデオは映画もしくはテレビ番組と同種のソフトであり、アステアの映像クリップは、このダンス教材を売るためのプロモーションとして使用されたものであるから、アステアの遺族からの同意は必要ないと判断されました。 どういった場合、肖像権使用についての同意が必要とされるのか微妙です。   

5.おわりに

ディジタル・テクノロジーを駆使することによって、映像クリップのオリジナルとは異なったイメージを創作することが可能です。スターをパロディに使ったり、全く別人に変えることもできます。アステア裁判のように、カリフォルニア州での例外として死亡したスターの肖像権を無断で使用することができるのか、それとも、映像について著作権をもつスタジオが自由にスターのイメージを変造することができるのか、不透明な部分が多いでしょう。ディジタル・テクノロジーの発展により、DVDやインターネットといった新たなマーケットが生まれています。それによって、だれがどういった権利をクリアしなければならないのか、気をつけなければなりません。


映像新聞2000年8月28日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
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