音楽ネット配信

 

急激に増加する音楽のネット配信

1.アメリカのコンテンツ・ビジネス

アメリカ発のコンテンツ・ビジネスには、映画だけでなく、音楽、コンピューター・ソフトウエア、書籍などがあり、これらのコンテンツは毎年2,500億ドルの利益を上げており、アメリカの経済に大きく貢献しています。

2.音楽の収益は6年で倍増

その中でも音楽からの収益は過去6年間で倍増し、全世界で387億ドルの収益のうち、アメリカはその約3分の1を占めています。 従来の配給システムでは、音楽家は、レコード会社との間で出版契約を結び、レコード会社がCDなりレコードを製造し、配給し、小売店に流通します。音楽家はレコードの販売・利用に応じてロイヤルティを受け取ります。コンピューターの急速な普及により、音楽ネット配信が従来の配給システムを変えつつあります。ディジタル化による音楽ネット配信が音楽著作権にどういった影響を与えるのでしょうか?

3.音楽著作権

アメリカ著作権法では、音楽著作権は、他の著作物同様、創作を有形物、たとえばレコードやテープなどに固定した時に発生します。音楽著作物には、録音物(sound recordings)に関する権利と録音物の基になっている著作物(compositions)に関する権利の2つがあります。 音楽家が作詞・作曲し、レコード会社が演奏家を雇い、もしくは音楽家に演奏させ、レコードにプレスします。できあがった最終プロダクトは録音物と呼ばれます。録音物に関する著作権は、通常レコード会社がもちます。録音物を利用する権利は、「マスター・ユース」ライセンスと呼ばれます。録音物に関する独占権には、複製する権利、変形する権利、頒布する権利がありますが、公に展示する権利と公に実演する権利は含まれていません。したがって、録音物の著作権者は、他人がライセンスなしに公に実演することを禁止できません。 これに対して、録音物の基になっている著作物の著作権者には、自分の詞や曲の実演権を保有しているので、他人がライセンスなしに実演することを禁止することができますし、これをコントロールすることができます。アメリカでは、実演権に関するライセンス・ロイヤルティを徴収し、管理する団体として、ASCAP,BMI,SESACなどがあります。たとえば、ある音楽がバーやレストランで使われた場合、これらの団体が、音楽著作物の著作権者に代わって、ロイヤルティを集めてくれます。

4.音楽のネット配信

問題となるのは、音楽がネット配信された場合、オリジナルのCDやレコードの同質のコピーをダウンロードすることができること、変形することも可能であり、音楽著作物の著作権者やレコード会社がロイヤルティや音楽の使用をコントロールできなくなることでしょう。 音楽ネット配信は近年急激に増えており、専門サイトは5万を越えています。インターネットで音楽を聞かせてCDのオンライン販売に結びつけるサイトから、消費者にPCのハードディスクにダウンロードさせるディジタル配信のサイトまで、多様化しています。音楽著作権者やレコード会社が一番頭を悩めているのは、後者のサイトであり、違法サイトを含めるとアメリカでの損害額は2億5、000万ドルに及ぶと言われています。

5.人気が高いMP3

音楽ディジタル・ダウンロードのファイル・フォーマットとして、a2bMusic,Liquid Audio, MP3,MS Audio,RealNetworksがあります。ネット上でダウンロードしてもCD並の音質があると言われています。中でも、MP3は、ネット上で無料でダウンロードできることからも非常に人気が高く、音楽著作権者やレコード会社から脅威と見られています。 MP3を使って音楽をダウンロードすることは違法でしょうか?もし、音楽そのものがパブリック・ドメインであったり、音楽著作権者がMP3に対してライセンスを与えていれば、合法です。そうでない場合には著作権侵害の問題が起こり得ます。  昨年10月、Diamond Multimediaという会社がMP3音楽ファイルをダウンロードできるMP3プレイヤー「リオ」を開発しました。リオはウォークマンのようなポータブル・プレイヤーで、値段も200ドルとお手頃です。リオで、いつでも好きな音楽をダウンロードして、聞くことができます。ダウンロードした音楽のコピーを防止する装置がついていないため、違法コピーを助長するであろうと懸念され、アメリカのレコード産業協会(RIAA)から製造差止め訴訟が提起されました。しかしながら、差し止め訴訟は棄却され、リオは11月から販売開始されました。

6.音楽業界での足並み

アメリカで、ネット上で音楽を配信する方法は、インディ系の音楽家たちから始まりました。無名の音楽家たちにとって、ネット上で音楽配信できることにより、年間会費を支払っても、売り上げの75%がロイヤルティとして手元に入り、多くの消費者がネット上でアクセスしてくれるので、レコード会社の宣伝広告に頼ることなくコンテンツをコントロールすることができます。消費者にとっても、ネット上で無料サンプル音楽を聴くことができ、その場でCDを注文できるので便利です。  メジャーなレコード会社のなかには、音楽ネット配信をビジネスとすることを考えています。たとえばマーキュリー、ハリウッド・レコーズ、グランド・ローヤルなどは、リオでダウンロードできるよう、MP3のフォーマットで無料の音楽をネット配信し始めています。ユニバーサル・ミュージック・グループは、BMGといっしょに、音楽とビデオをネット上で配給するための技術を開発しています。 レコード産業協会は、ソニー、BMG、EMI,ワーナー、そしてユニバーサルと共同で、ディジタル・フォーマットでの音楽配信された場合の著作権保護について標準化を図ることで合意しました。その他、ディジタル録音装置の製造については、アメリカでの販売業者にロイヤルティの支払い義務を課したり、孫コピーを防止するためのシリアル・ナンバー管理システムを義務付けたり、コピーを個人使用目的に限定したりすることを法律で定めています。

7.技術が新しい法律問題生む

音楽ネット配信により、あらたな出口を見いだした音楽家たち、従来の配給システムを維持したいレコード会社、違法コピーの氾濫を心配する著作権者たち、新しい技術を製品化したい家電メーカーなど、いろいろな利権が入り組んでいます。 1975年ビデオ・デッキが初めて市場に現れた時、家庭で無料で映像をビデオ録画することができるため、著作権侵害のおそれありとしてユニバーサルがソニーを訴えたことがありました。アメリカの最高裁判所は、家庭でビデオ・デッキを使い、映像をコピーすることは「フェア・ユース」であるとしてユニバーサルの主張を退けました。新しい技術が生まれると、常に新しい法律問題が発生するものです。最終的には、消費者が取捨選択していくことになるでしょう。

映像新聞2000年8月28日掲載  (c) 2000 Midori Mahl All Rights Reserved

 
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